歯の状態について

不正咬合の理解の仕方

自分あるいはお子さんが不正咬合らしいと思ったとき、まず気になるのは、前歯が出ている、八重歯、受け口などの症状かと思います。
それらの症状も重要ではあるのですが、もっと重要なのは上下の奥歯の関係です。上の奥歯が下よりやや後ろにあるか、よく見てください。
さらに重要なのは、上下のあごの骨の大きさ、位置関係です。永久歯全部を収容できる大きさか、前後左右の位置関係に異常はないか。ただしこれは、よほど熟練しないとわかりません。

下の前歯が3本しかないケース

時々あります。意外と多いケースです。正しい噛み合わせは、上下の歯の本数が揃っていることが前提です。その前提を欠くわけですから、矯正治療としてはやや大変です。
もともと歯が大きいなど、抜歯する方が良いケースでは比較的楽です。ただし、どの歯を抜くかは考えなければなりません。
歯が小さいなど、本来抜歯ケースとしたくない場合でも、本数を合わせるために抜歯せざるを得ないことがあります。やや難しい治療となります。
ない歯のスペースを空け、抜歯ケースとしないこともあります。この場合でも、ない歯の部分を人工のもので埋めなければなりません。
普通のケースなら不要な色々な配慮が必要となるのです。

不正咬合は就職に影響する?

就職面接は短い時間で決まってしまうのですから、人柄も能力も外見も総動員して判断するしかないでしょう。当事者としては本当に気を使うと思います。
以前TVで就活問題の番組を見たとき、驚いたのは登場した若者達が皆、歯並びがとても悪いことでした。話す度にとても目立つのです。影響したのでは?と思えるほどでした。
現在は就活を意識して歯並びを治す人も多くいます。今の社会では、たとえ矯正装置がついた状態でも健康観が高度であると評価され、面接では好感度だと思います。

不正咬合への関心の度合いは、健康観の違いによる

不正咬合への関心度は人により大差があるようです。はっきりとわかる受け口の中学生を連れて来られ「別段変とは思わなかった」とあっさり言われるお母さんもおられます。気がつかなければしょうがないかもしれません。しかし不正咬合がもたらす健康への害(生理的、心理的)は、気がついてみると深刻なものです。成熟した社会ほど高い度合いの健康を求めます。日本社会も、すでに高度の健康観を持っているのです。

親知らず(第三大臼歯)について

歯を抜かないで矯正できるケースは少なくありません。しかし不正咬合の多い日本人では、親知らずまで存置できるケースはそう多くないのです。小臼歯抜歯ケースでも、親知らずまで抜くことが多くあります。
いずれも、そのまま放置するとほかの歯の並びを阻害し、全体の咬合を壊す可能性があるからです。ただし例外的に、親知らずが普通に萌えそうな場合のみ抜きません。
以上の意味で、親知らずは抜くケースの方が圧倒的なのが現実です。

日本人は骨に余裕がない場合が多く、また親知らずは、形や内部構造に問題が多く、長期的に頼りになる歯とは言えません。また、現在の矯正装置でも第3大臼歯まで3本の大臼歯を動かすパワーはないのです。
ただし第2大臼歯(12才臼歯)を欠いている場合や、やむを得ず抜いた場合などは代替に使います。この場合、観察期間は長くなります。

現代人はあごが細くなって歯並びが悪くなっている?

現代は食事が柔らかいものばかりになったので、あごが細くなり、歯並びが悪くなっている、という説明をよく聞きます。でもこれは間違いなのです。顎骨の大きさが変化したのではなく、実は歯の大きさが大きくなっているとの報告がありました。これを肥満歯などと呼ぶ人もいます。栄養が良くなった結果でしょう。
当院では歯の大きさは常に計測していますが、確かに平均値以上の大きさの歯が圧倒的多数です。その事実の上に顎骨の小さいことが加わって、歯があふれていると言うべきでしょう。

なぜ悪い歯並びができるのか

悪い歯並びの原因は、本当のところはよくわかっていません。しかし、日本人には叢生が多く、欧米人には少ないなどの事実、また祖父母、両親、子どもと歯並びが似てくることなどからは、やはり生まれつきの骨格が大きな要因と言うべきでしょう。また、歯の大小にも民族、家系的特徴が見られます。
つまり、骨格および歯の大きさに民族的な傾向がまずあって、そこに遺伝的な傾向が加わり、さらに個々人のバリエーションも生じて、それぞれの悪い歯並びが生じてくるのです。
このほか、指しゃぶり、頬杖などの外力も、過度になると悪い歯並びの一要因となることがあります。でも第一には、いわば神様の設計図とでも言うべき上記の事情が大きいことをご理解ください。

なぜ歯は動くのか

矯正では、力を加えると歯が移動します。治療経験者なら、自分の歯がいつのまにか移動してスペースが空いたり、ほかの歯と並んできたりして、驚いた経験がおありと思います。

実は、歯の根っこ(歯根)の周囲にある現象が起こるのです。
一定以上で方向が決まった力が歯に加わると、歯根周囲の骨に特別な細胞が生じます。歯が移動する方向の骨には破骨細胞が、反対側に生じた空洞には造骨細胞が現れます。つまり移動する方向では細胞が骨を食べて空洞を作り、反対側では骨が作られて生じた空洞が埋められていくのです。その結果、歯の位置が変化します。この繰り返しで歯が動いていくのです。

そして、動く方向と距離を、ワイヤとエラスティックでコントロールするのです。
正確なコントロールには、緻密な計算と多くの経験が必要です。矯正治療の特殊性と難しさはここにあり、矯正に専門医が必要な理由もこの難しさにあります。

まずはご相談ください

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