装置の種類
現代の矯正治療の主役 マルチブラケット装置
マルチブラケット装置とは、歯の1つひとつにブラケットという小さな装置を接着し、それにワイヤーを通して少しずつ力を加えて歯並びを三次元的に整える装置です。いわゆるワイヤー矯正に用いる、最もポピュラーであり、なおかつ最も信頼度の高い矯正装置です。また、弱いワイヤーで動かすため、痛みはないといってよいでしょう。
全部の歯の位置と傾きを同時に動かすためほとんどの症例に対応でき、治療効率が良く、治療結果が優れていることから、大人の矯正の主役の装置です。また、子どもの矯正でも前歯を整えるなど、随所で重要な役割を果たします。
マルチブラケット装置で行う矯正テクニックとしては、断面が四角のワイヤーを用いるエッジワイズ法が主流です。当院は主にスタンダードエッジワイズ法を採用しています。
一昔前までは金属製のブラケットが主流だったため、ギラギラして目立つ印象が強く、そのデメリットを避けるためにさまざまな治療方法が開発されてきたといえるかもしれません。しかし、三次元的かつ精密な歯の移動を可能にするには、ワイヤー矯正が最も有効です。
最近では、不正咬合の一部はマウスピースなどでも歯列矯正が可能といわれているようですが、治療結果として満足できるレベルではありません。そこで当院では、マルチブラケットを中心に、個々の患者さんに適したていねいで精密な矯正を行っています。
また、現在は装置の改良が進んでいますので、小型化し、目立たない色のブラケット(審美ブラケット)が登場しています。ただし、性能は金属製の方が優れている面がありますので、当院では、見えにくいブラケットを主に、用いる箇所によって使い分けています。
ブラケットの種類(素材)と特徴
●金属製ブラケット
<メリット>
ワイヤーの滑りが良いため、他のブラケットに比べて多少早く歯が動く
<デメリット>
銀色なので治療をしているのが目立つ
●セラミック製ブラケット
<メリット>
ブラケットの色が歯の色に近いので、矯正していることが目立たない
<デメリット>
金属ブラケットに比べると強度に劣り、稀に割れる場合がある
●レジン(合成樹脂)製ブラケット
<メリット>
セラミック製ブラケットと同様に、矯正しているのが目立ちにくい
<デメリット>
ブラケットが大型で磨耗しやすく、柔らかすぎてワイヤーの力が歯にきちんと伝わりにくい
マウスピース型カスタムメイド矯正装置(インビザライン)
マウスピース型カスタムメイド矯正装置(インビザライン)とは、患者さん一人ひとりの治療計画に合わせてコンピュータを用いて作製されたオーダーメイドの透明なマウスピース型の矯正装置です。
透明な装置ですので、装着してもほとんど目立ちません。また、必要に応じて取り外すことができます。
ワイヤー矯正よりも歯周組織にかかる負担が少なく、金属アレルギーの方でも装着することができます。
子どものI期治療の主役はいろいろな矯正装置
フレンケル
子どもの矯正に用いる機能性矯正装置です。お口周りの筋肉の力を利用して矯正治療を行う装置なので、バネやゴムは使用しません。頬や唇などの圧力を排除し、かつ上下の顎骨の位置関係を適正に保ち、口腔周辺の筋肉バランスを修正しながら上下顎の自然な成長を促す装置です。出っ歯用や反対咬合用などもあります。
ヘッドギア
お口の中で上顎の奥歯につけた小さな装置に差し込み、奥歯を後ろに移動させると共に上顎の成長を抑制する装置で、主に出っ歯の矯正に使用します。子どもの矯正に用いることがほとんどです。
プレート(移動用ネジつき)
上顎の奥歯を後ろに移動させるなど、さまざまな用途に使用します。ネジを回してワイヤーの枠に囲まれた歯が移動します。治療効果が確実な装置のひとつです。
ナンスのホールディングアーチ
奥歯が前に動かないよう、奥歯の位置を保つために使用します。
急速拡大装置
歯につける金属のバンドと、歯列の幅を押し広げる拡大ネジで構成する装置です。2週間ほどの短期間でネジで上顎の幅・歯列の幅を広げます。主に子どもの矯正で使用しますが、痛みはなく極めて安全な装置です。
プロトラクター(上顎前方牽引装置)
上顎の成長が不足しているために反対咬合が起きているといった、骨格に原因がある反対咬合の治療に使用する装置です。口腔内に取りつけたフックと顔の前方に取りつけたフェイスマスクとの間にエラスティック(輪ゴム)をかけて使用し、上顎の前方成長を促します。家にいるときに使用します。大変パワーのある装置ですが、使い方で治療効率が変わります。
リテーナー
矯正装置での治療が終了したあとに使用する装置です。矯正装置は歯や顎を動かす装置ですが、リテーナーは矯正装置を外したあとに、整えた歯が元の位置に戻ろうとする後戻りを防止する『歯を動かさないための装置』です。リテーナーには、プレートタイプ、マウスピースタイプ、取り外しができないタイプなどいろいろありますが、最もよく使用するのはプレートと総称されるタイプです。
QH(クォードヘリックス)
上顎の拡大装置のひとつで、作りやすく、性能が優れているので使用頻度が高い装置です。主に成長期の顎の拡大に使用しますが、大人でもマルチブラケット装置の装着前や装着中に使用することがあります。
BH(バイヘリックス)
下顎に使い、バネの力で歯列を拡げる固定式装置です。上顎のQH(クォードヘリックス)と対で使うことが多く、形が小さいわりに効果が高いです。
拡大床
主に子どもの矯正治療で使います。中央にあるネジを調節して顎を左右に拡げます。扱いやすいですが、ややパワーに欠けます。
タングクリブ
開咬(オープンバイト)の治療に用います。上顎の大臼歯に装着し、柵の部分は前歯の裏に位置します。この柵で歯並びを悪くしている原因の1つである舌癖を防ぎ、舌が前に出てこないようにする装置で、主に子どもの治療に使用します。場合によりますが、かなりの効果がみられます。
ジャンピングプレート
上顎につけます。下の前歯が当たる部分が斜面になっています。これで下顎を前に誘導します。食事、歯磨きなどのときは外します。着脱が簡単なので小さいお子さんでも自分でできます。使いやすい装置です。効果はややマイルドです。