子どもの矯正
子どもの矯正は第I期と第II期に分かれます
子どもの矯正治療は、大きくわけると第I期治療と必要な場合に行う第II期治療とがあります。
第I期治療では、顎の成長の促進や抑制を行ったり、歯並びが凸凹にならないように顎の骨を拡げるなど、主に骨格的な問題を正すことに努めます。その結果、前歯や奥歯もきちんと並んできます。I期治療のみで終了する場合は多くあります。
第II期治療は、必要な場合に行います。すべての歯が永久歯になってから行い、すべての歯が噛み合うように個々の歯の位置を整えます。年齢的には、通常は中学生以降に行う治療です。
第I期治療
第I期治療は、骨格的な問題を正す治療が中心です。特に小学生までであれば、機能的矯正装置による矯正治療が有効です。
機能的矯正装置とは、ワイヤーやゴムといった矯正材料の力ではなく、噛む力をはじめとするお口周りの筋肉の力を利用して矯正治療を行う装置の総称です。成長期に用いることで上顎や下顎の成長を促進し、過蓋咬合や機能性反対咬合を治療します。
また、機能的矯正装置は、患者さんご自身での着脱が可能です。
この時期に行うべき治療は、具体的には、叢生、上顎前突での大臼歯の後方移動、反対咬合での前歯からの前方牽引などです。歯を抜かずに治療するためには、奥歯をできる限り大きく移動させるケースがありますが、当院ではヘッドギアのほかにも装置を色々と工夫することによって良い結果を上げています。
子どものI期治療の主役はいろいろな矯正装置
フレンケル
子どもの矯正に用いる機能性矯正装置です。お口周りの筋肉の力を利用して矯正治療を行う装置なので、バネやゴムは使用しません。頬や唇などの圧力を排除し、かつ上下の顎骨の位置関係を適正に保ち、口腔周辺の筋肉バランスを修正しながら上下顎の自然な成長を促す装置です。出っ歯用や反対咬合用などもあります。
ヘッドギア
お口の中で上顎の奥歯につけた小さな装置に差し込み、奥歯を後ろに移動させると共に上顎の成長を抑制する装置で、主に出っ歯の矯正に使用します。子どもの矯正に用いることがほとんどです。
プレート(移動用ネジつき)
上顎の奥歯を後ろに移動させるなど、さまざまな用途に使用します。ネジを回してワイヤーの枠に囲まれた歯が移動します。治療効果が確実な装置のひとつです。
ナンスのホールディングアーチ
奥歯が前に動かないよう、奥歯の位置を保つために使用します。
急速拡大装置
歯につける金属のバンドと、歯列の幅を押し広げる拡大ネジで構成する装置です。2週間ほどの短期間でネジで上顎の幅・歯列の幅を広げます。主に子どもの矯正で使用しますが、痛みはなく極めて安全な装置です。
プロトラクター(上顎前方牽引装置)
上顎の成長が不足しているために反対咬合が起きているといった、骨格に原因がある反対咬合の治療に使用する装置です。口腔内に取りつけたフックと顔の前方に取りつけたフェイスマスクとの間にエラスティック(輪ゴム)をかけて使用し、上顎の前方成長を促します。家にいるときに使用します。大変パワーのある装置ですが、使い方で治療効率が変わります。
リテーナー
矯正装置での治療が終了したあとに使用する装置です。矯正装置は歯や顎を動かす装置ですが、リテーナーは矯正装置を外したあとに、整えた歯が元の位置に戻ろうとする後戻りを防止する『歯を動かさないための装置』です。リテーナーには、プレートタイプ、マウスピースタイプ、取り外しができないタイプなどいろいろありますが、最もよく使用するのはプレートと総称されるタイプです。
QH(クォードヘリックス)
上顎の拡大装置のひとつで、作りやすく、性能が優れているので使用頻度が高い装置です。主に成長期の顎の拡大に使用しますが、大人でもマルチブラケット装置の装着前や装着中に使用することがあります。
BH(バイヘリックス)
下顎に使い、バネの力で歯列を拡げる固定式装置です。上顎のQH(クォードヘリックス)と対で使うことが多く、形が小さいわりに効果が高いです。
拡大床
主に子どもの矯正治療で使います。中央にあるネジを調節して顎を左右に拡げます。扱いやすいですが、ややパワーに欠けます。
タングクリブ
開咬(オープンバイト)の治療に用います。上顎の大臼歯に装着し、柵の部分は前歯の裏に位置します。この柵で歯並びを悪くしている原因の1つである舌癖を防ぎ、舌が前に出てこないようにする装置で、主に子どもの治療に使用します。場合によりますが、かなりの効果がみられます。
ジャンピングプレート
上顎につけます。下の前歯が当たる部分が斜面になっています。これで下顎を前に誘導します。食事、歯磨きなどのときは外します。着脱が簡単なので小さいお子さんでも自分でできます。使いやすい装置です。効果はややマイルドです。
第II期治療
第I期治療を受けた方の多くは、永久歯が生え揃ったこの第II期で仕上げの治療をします。
子どもの矯正では、骨格への働きかけは、第I期治療でできるだけ迅速に行います。その段階で奥歯の移動や骨格の成長によってスペースを確保し、第II期治療ではマルチブラケット装置を使用したスタンダードエッジワイズ法により、歯並びを全体的に整えていく流れです。
矯正治療期間中の注意点
矯正装置を装着していると装置の周囲に食べカスが残りがちで、虫歯や歯周病になりやすくなってしまいます。そのため、通常以上にていねいにブラッシングすることや、食べる物に注意を払うことが大切です。せっかく歯並びを治しても、虫歯や歯周病にかかってしまっては元も子もないので、治療中は下記のことに注意しましょう。
ブラッシング
毎食後必ず歯を磨くことを心がけましょう。自宅ではもちろん、外出時でも食後は歯を磨くことが虫歯や歯周病予防につながります。通常よりも時間をかけてていねいにブラッシングするだけでなく、装置の構造に合わせた磨きやすいタイプの歯ブラシ(歯間ブラシなど)によるブラッシングもプラスすると良いでしょう。手鏡を利用して、装置の周囲の汚れが取れているかを確認しながら磨くのがポイントです。
食べ物
基本的に、食べてはいけない物はありません。しかし、ガムやキャラメル、お餅などは歯や矯正装置に付着しやすいため、注意した方が良いでしょう。また、おせんべいやナッツ、氷といった固いものを噛むと、装置が破損する恐れがあります。小さく砕いてから食べるようにしましょう。