矯正治療について

矯正治療では検査が極めて重要です

矯正相談では、症状と治療方針の概略をお話しします。しかしこれらは当然ながら可能性に過ぎません。
ほとんどの不正咬合は、いろいろな症状が複合しています。目につく症状が最重要とは限りません。矯正治療ではx線でわかる骨格のデータ、個々の歯および歯列の状態、子どもでは成長発育状態の数値、などの検査データを得て初めて具体的な症状を確定し、治療方針を出すことができます。

手軽な矯正治療はない

矯正治療は医療です。従ってできるだけ精密な資料をもとに計画し、途中の臨機応変な対処も必要です。それには十分なトレーニングと経験が必要です。
特に重要なのは、途中および終了時について可能な限り正確な見通しをもつことです。これが難しいのです。ドクターがいかなる見通しを有しているのか、よくお聞きになることが必要でしょう。

床矯正って何?

床矯正とは、取り外しのできるプラスチック製の装置を用いる方法です。別段特別な治療法ではありません。矯正専門医は、数ある方法の一種として日常的に使いこなしています。
床矯正で重要なのは、限界を知って使うことです。
成長発育に影響させることが主目的ですから、子どもにはかなり効果的です。しかしほかの装置の方が良いことも多くあります。また、床矯正だけでは永久歯をきちんと並べることはできません。
成長発育が期待できない大人では、極めて限定的な効果しか出ません。従って補助的にしか使えないのです。

無料矯正相談と有料矯正相談の違い

矯正治療は相談(初診)から始まります。診療所によって違いますが、有料相談と無料相談とがあります。無料の方が良いと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
無料相談には何人もの方が来られ、あるいは診療の合間に行うため、十分な時間をお取りできないのです。相談に見える皆さんは、いわば矯正初心者です。ドクターが良く聴き取り、良く診察し、画像を用いてわかりやすい説明をするためには、どうしても最低30分から1時間程度は必要です。
抜歯の必要性などの重要問題についてはもちろん、そのほかについても質問しながら良く理解し、満足のいく相談とするためには、やはり時間が必要です。
無料相談は大まかな方向は得られますが、比較すべきその他の選択肢は隠れてしまうことがどうしてもあるのです。

矯正治療をやらないとどうなりますか?

日本人には不正咬合の人が多く、矯正治療が必要とされます。でも時間と費用がかかる点が悩ましいところです。では、やらないとどうなるか。通常はそのままです。別に生命に関わるわけではありません。
しかし、ほかの医療と同じで、矯正治療の目的も健康です。気持ちの健康も入ります。生活する中で十分に健康を保ち、快適な日々を望むなら、やはり必要な治療でしょう。

装置のいらない矯正治療はないの?

「装置なしでできるわけがない」と思われるでしょう。ところがあるのです。場合を選びますが。
前歯と奥歯のみ永久歯の時期に、乳歯をある順序で抜いていき、最後に小臼歯を抜きます。これで全体に並びます。なかなか悪くない結果もあります。
ただし条件は厳しく、歯の大きさ、上下の関係が相応の範囲内でなければなりません。読みが難しいのです。また、永久歯を抜歯する治療法であることは大きな欠点です。
このような理由で、最近はあまり行われなくなりました。

新しい矯正治療法ってあるの?

インターネットなどを見ていると、矯正治療関係の情報も多くあります。インプラント矯正、**システム、床矯正その他など。
矯正治療とは、アンカー(しっかり動かない部分)から目的の歯に力を加え、必要量の移動をさせる治療です。
インプラント矯正とは、あごの骨に鋲を打ってアンカーとする、というだけで、ほかの部分はまったく普通の矯正治療です。歯の動く速度に変わりはなく、一部の特殊なケース以外はほとんど不要です。 
また、矯正装置として最高の性能のものは、すべての歯を同時に動かすエッジワイズ装置であることに議論の余地はありません。その他の新装置は簡便さを追求したもので、装置としての性能はかなり低いものです。情報に惑わされずにしっかりとした装置で治療を受けていただくこと、それが成功への早道です。

矯正治療はスポーツ選手に力を与える

2006年11月の東京国際女子マラソンで土佐礼子さんが優勝しました。土佐さんは先年より矯正歯科治療を始めていたそうです。確かに写真を見ると歯に装置がついています。そして、記事には「噛み合わせが良くなったせいで良い影響があった」とありました。
スポーツに悪影響がないだろうか、と心配される方が時々おられます。その都度誤解であることはご説明するのですが、土佐さんのおかげでこの誤解は解けたのではないでしょうか。むしろ、噛み合わせが良くなりそれだけ力が出る、ということなのです。矯正医としては誠にうれしい限りです。

矯正はアートだ。でも

矯正治療を行うとき、口元の美しさを考えない人はいないでしょう。ドクターももちろんです。治療にあたって考えなければならない要素は、噛む能力の回復をはじめ多くありますが、美しさは忘れてはならない要素です。
矯正治療では、Eラインという基準があります。鼻の先端とオトガイを結んだ直線ですが、この内側に上下口唇が入っているのが良い、と言われます。しかし、日本人ではこのような人は滅多にいません。Eラインにこだわるのは間違いでしょう。美しさの判定には大きな幅がありますが、まずは噛む機能が十分な状態で実現される美しさを目指すべきかと思います。治療を受ける方々の求めるところもここにあるといつも感じています。

矯正治療と美容整形の違い

矯正治療と美容整形との違いが意外と理解されていないようです。
美容整形は、一重まぶたを二重にするなど、健康な状態を別の健康な状態に変えるのが基本と思われます。
しかし歯の矯正治療は、常に不正咬合という不健康な状態を健康な歯並びに変えます。つまり、病気の治療が基本です。ただし、患者さんから見れば、矯正治療とは美しくない状態を美しい歯並びにすることです。
実は、これはほぼ同じことを言っているのです。つまり、見た目で美しい歯並びとは、実は良く機能する健康な歯並びなのです。美しさを求めることで健康を求めることになるのです。
従って、矯正治療はやはり、本質的に健康を目指す治療と言うべきであり、美容整形とは異なると言うべきでしょう。

まずはご相談ください

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